【高大接続・共通テスト情報】初回実施は21年1月16・17日。まだ未確定要素も多いが、「共通テスト」は走り出した!!

大学入学共通テスト「実施大綱案」公表

 文科省は5月29日、大学入試改革の一環で、大学入試センター試験に代わって2021年度から導入される大学入学共通テストについて、「実施大綱案」を有識者会議で示した。また、この日は、共通テストに導入される英語の民間試験の運用案も示された。
 21年度入試では、受験生は20年4~12月、大学入試センターが発行する「ID」を使って民間試験を2回まで受けられる。その成績はセンターを通じて大学に提供される。手続きなどの詳細はセンターが今年8月までに作成する要項で示す。
 実施大綱は6月上旬にも正式決定する。共通テストは現在の高校2年生から対象になる。
 大綱を踏まえ、大学入試センターが6月上旬に問題作成方針などを作り、試験の時間割や試験場、検定料などの詳細は20年6月ごろに要項で示す予定。

「国語」20分・「数学Ⅰ・A」10分間延ばす

【試験日はいつ?】21年1月16日(土)、17日(日)
 試験日はセンター試験と同様に「1月13日以降の最初の土曜、日曜」で、初回は21年1月16、17日。
【試験時間の変更はあるの?】国語20分、数学Ⅰ・A10分間延ばす
 国語と数学1・Aは、現行のマークシート式に加え記述式が導入されることに伴い、試験時間は国語が80分から100分に、数学1・Aは60分から70分にそれぞれ延ばす。

■「共通テスト」実施までのスケジュール
年 月 実施予定の内容
19年6月 文科省が共通テストの大綱を決定。大学入試センターが問題作成方針を公表
11月 英語の民間検定試験のIDの申し込み
20年1月頃 IDを受験生に配布
4月 検定試験開始
12月まで最大2回受けられる
6月 大学入試センターが共通テストの実施
要項発表
21年1月 第1回共通テストを実施

入試センターが問題作成の方針発表

 大学入試センターは6月7日、現行のセンター試験に代えて2021年に実施する「大学入学共通テスト」の問題作成方針などを発表した。
【英語の作成方針は?】配点が変わる
 英語の配点を現行の筆記200点とリスニング50点から、リーディング100点、リスニング100点とする。
 共通テストの英語は、国際的な語学力基準
「CEFR」でA1~B1レベル相当の問題を作成。
「読む・聞く・話す・書く」の4技能評価で民間資格・検定試験の成績評価を導入する。
 筆記にあった発音やアクセント、語句整序の問題は単独では出さない。リスニングは問題文の1回読みと2回読み両方を含む構成で実施する。


細かい9段階評価とはどんなスタイル?

【国語・数学の方針は?】記述の国語は80~120字、数学は小問をそれぞれ3問
 国語と数学I、数学I・Aはマークシート式に加え、記述式の小問をそれぞれ3問課す。国語は最長の問題で80~120字程度を上限に設定する。試験時間は国語を現行の80分から100分に、数学2科目は60分から70分にそれぞれ増やす。マーク式では新たに、前問の答えと連動して次の問題を解く形式を出題する場合がある。
【段階別評価はある?】9段階評価の成績も提供
 1点刻みによる合否判定への批判も踏まえ、大学には参考情報として科目ごとに9段階評価の成績も提供。国語の記述式は全体と小問ごとに段階別で伝える。

英検は都道府県に1か所以上の会場

 何と言っても注目されているのが、外部検定試験をどのように実施するかだ。初めての年度はセンター試験のように、55万人前後の志願者がいたら大変なことになるかもしれない。
【英検の会場数は?】最低でも都道府県に1か所
 日本英語検定協会はこのほど、試験会場に設置されたPCで受験する「英検CBT」「英検2020 1day S-CBT」の実施会場を全国47都道府県に広げると発表した。既存の学校施設は借りず、全て専用のテストセンターを設置することで、公平で厳正な試験を全国で目指すという。
【受検できるのは?】現状、2級・準2級・3級のみ
 英検CBTは、PCで受験する実用英語技能検定(英検)。出題される問題は紙で行う通常の試験と同じで、同様の資格が得られる。現状、受験できるのは2級・準2級・3級のみに限られる。
 全国47都道府県のそれぞれに最低1か所以上の会場を設置する。これまでは15都道府県に設置されたテストセンターでしか受験できず、試験会場が少ないといった課題があった。
【全国に常設しないの?】常設を目指して検討中
 現時点で、利用できるのは2020年度に行われる試験のみとしているが、以降も常設できるように検討中だという。大学入試センター試験に代わり、2021年1月から始まる「大学入学共通テスト」では、英語試験の効率化を目的として、民間の資格・検定試験を活用する「大学入試英語成績提供システム」が採用される。
 英検CBT、英検20201 day S-CBTも同システムに含まれており、全国に専用のテストセンターを設置することで、試験の信頼性と利便性を高める狙いもある。

GTEC6~11月に4回は少ないかも?

 「大学入学共通テスト」で導入される英語民間試験の1つ、GTECを運営する教育事業大手・ベネッセコーポレーション(岡山市)は5月16日、20年4月以降の概要を公表した。
【回数を増やせないか?】6~11月に4回実施
 同年は6~11月に4回実施する。やはりCBT方式で「話す」のテストを行うが、話した内容をタブレット端末に記録するため、そこからデータを抜き出して再び使える状態に戻すのに1か月程度かかり、回数を増やせないという。
【受験料はいくら?】6700円を予定している
 受験生からは経費の心配の声が聞こえてくる。民間試験について「居住地や経済状況で、受験機会や回数に格差が生じる」との懸念が出ていることを踏まえ、高3と既卒者の受験回数を2回までに制限する。
 また、受験料は6700円(税込み)を予定。

共通テストを「活用する」は私立65%

 文科省は5月31日、大学入試センター試験に代わって始まる大学入学共通テストの活用の検討状況(今年1月時点)について、全国の国公私立大学に尋ねた結果を公表した。
【共通テストの活用は?】私立は検討が遅れている
 「活用する」大学は国立大学で約98%に上ったが、私立大学は約65%にとどまり、約30%が「まだ決まっていない」と答えた。21年1月の共通テスト実施まで残り1年半だが、詳細な内容や運用方法が公表されていないため決めかねているとみられる。
【センター試験の利用は?】国公立が全校、私立9割
 現行のセンター試験は、国公立大学の全校、私立大学の9割が活用している。調査は今年1月にメールなどで実施し、全大学1068校の9割にあたる964校が回答した。
 共通テストを「活用する」大学は、国立97.6%、公立92.7%、私立65.3%。「活用しない」大学は、国立がゼロで、公立1.2%、私立4.2%。一方、「まだ決まっていない」大学は国立2.4%、公立6.1%に対し、私立は30.3%と目立った。

北大・東北大・京都工芸繊大は不活

 共通テストで導入される国語の記述式問題は、成績が5段階で表示されるが、「点数化して得点に加点する」かどうかについては「まだ決まっていない」が69.3%を占めた。大学入試実施要項は、大学が入試内容を大きく変更する場合、およそ2年前に受験生に予告しなければならないという「2年前ルール」を設けている。
【使用しない大学はあるの?】4校ある
 文科省は、受験生の混乱を避けるため、活用の有無などを速やかに公表するよう各大学へ要請する。また、文科省が、共通テストで導入される英語の民間資格検定試験の活用の有無を国立大学82校に調査(5月13日時点)した結果、79校が「活用」、4校(北海道大学、東北大学、筑波技術大学、京都工芸繊維大学)が「活用しない」と回答した。