【受験に関わる費用】私大入学までにかかる費用は85~90万円。下宿する場合は敷金・引っ越し費用等の準備も忘れずに。

 大学進学にかかる費用は、受験生を持つ親にとって大きな関心事の一つ。いざという段になって慌てることのないよう、どの時期にいくらぐらいお金が必要になるのか、大まかな目安を頭に入れておきましょう。
 日本政策金融公庫の調査によれば、昨年度の大学入学者の入学費用は大学が88万4000円、短大が73万1000円。私立大学は理系が85万5000円、文系が90万4000円、国公立大学は80万1000円となっています(平成30年度「教育費負担の実態調査結果」)。ここでいう入学費用とは、「受験時までにかかるお金」と、「入学時にかかるお金」を合算した費用のことです。
 以下、それぞれについて詳しく見ていきましょう。

受験料は5校併願で約15万円かかる

 「受験時までにかかるお金」は、主に受験料と受験のための交通費・宿泊費で、入学費用全体の約3~4割を占めています。
 受験料はセンター利用試験の場合、3教科以上が1万8000円、2教科以下が1万2000円。さらに国公立大学の2次試験では約1万7000円になります。一方、私立大学は学部や試験方式によって多少幅がありますが、一般入試で3万~3万5000円(医・歯学部は4万~6万円)、センター試験利用入試では1万5000~2万円ほど。仮に国公立大学2校(前・後期)と私立大学3校を併願したとすると、受験料だけで15万円前後の出費になる計算です。併願校が増えれば、当然、受験料はさらにかさむことになります。
 ただ、私立大学の中には「学内併願」の受験者に対して受験料の割引・減免を行っているところが多いため、こうした制度を利用することで出費を抑えることも可能です。例えば専修大学の場合、一般入試の受験料は3万2000円ですが、同一試験日の学部・学科を併願すると、2出願目が1万5000円、3出願目では1万円に割引になります。中には大東文化大学や拓殖大学のように、2学科目が無料という入試制度を設けている大学もあります。割引・減免の金額や条件は大学ごとに違うので、学内併願を考えている人は、各大学のホームページなどで事前に確認しておくとよいでしょう。
 また、近年は「インターネット出願」を導入する大学も目立ってきています。従来のように願書(募集要項)を取り寄せる必要がない上、インターネット出願を利用することで受験料が安くなる(出願1回につき2000~5000円程度割引になるケースが多い)こともあります。

■国公立・私立別にみた入学費用(子供1人当たりの費用)

国公立・私立別にみた入学費用

(日本政策金融公庫「教育費負担の実態調査結果(2019年3月20日)」)

遠隔地受験は交通費・宿泊費の用意も

 遠方の大学を志望する受験生は、上記の受験料に加え、さらに交通費や宿泊費、食費などが必要になります。例えば、名古屋在住の受験生が都内の大学を受ける場合、交通費約1万8200円(新幹線のぞみ自由席往復、学生割引を利用)、宿泊費約1万円(ビジネスホテル利用)、さらに食事代などの雑費3000円と、計3万円程度の出費が見込まれます。
 特に遠方で複数校を受験する場合には、数日間にわたって連泊したり何回も往復したりしなければならず、5~10万円の出費を覚悟する必要があります。最近は全国の主要都市で「地方入試」を行っている大学もあるので、自宅の近くに試験会場があるか確認しておきましょう。
 宿泊料金は安いものでは素泊まり5000円程度からありますが、お勧めなのは旅行会社と提携した「受験生応援プラン」などのパック商品。料金は1泊朝食付き8000~1万5000円が主力ですが、試験当日の「合格弁当」、自習ルームの利用、試験会場の案内といったサービスやサポート体制が充実しているホテルが多く、保護者としても安心できる宿泊環境が整っています。このほか、飛行機や新幹線チケットと宿泊がセットになったお得なプランなども用意されています。受験シーズンは予約で一杯になることも多いため、宿泊先の手配は早めに済ませておきたいものです。
 なお、教育ローンで融資を受けられるのは合格後になるため、受験の費用は現金で準備する必要があります。特に私立大の一般入試は費用がかさみがちなので余裕を持って準備しておきましょう。

■検定料・受験料一覧
センター試験(3教科以上) 1万8000円
センター試験(2教科以下) 1万2000円
国公立大学2次試験 1万7000円
私立大学一般入試(医・歯学部を除く) 3万~3万5000円
私立大学一般入試(医・歯学部) 4万~6万円
私立大学センター利用入試 1万5000~2万円


手続時に入学金+授業料半期分が必要

 次に「入学時にかかるお金(学校納付金)」について見ていきましょう。大学に払い込む「初年度納付金」の内訳は、入学金、授業料、さらに私立大の場合は施設設備費、実験実習費、諸会費などが加わります。入学手続き時には、これらのうち入学金全額と、授業料、施設設備費等の半額(前期分)を納入するのが一般的です。
 初年度納付金の額は大学・学部により異なります。
(国公立大と私立大の平均額は下の図表に示した通りですが、納付金について別ページ(「学費」でも詳しく解説していますので、そちらも併せてご参照ください。)

■2018年度 国公立大学費・初年度納付金(単位:円)
大学 授業料 入学料 合計
国立 535,800 282,000 817,800
公立 都内 520,800  141,000 661,800
都外 520,800 282,000 802,800
〈注〉公立大:首都大東京、授業料は1年分

■2017年度 私立大学費・初年度納付金(単位:円)
大学 授業料 入学料 施設費 合計
文科系 781,003 231,811 152,496 1,165,310
理科系 1,101,854 254,941 184,102 1,540,896
医歯系 2,847,940 1,050,306 872,711 4,770,957
その他 957,495 264,503 230,103 1,452,102
全平均 900,093 252,030 181,294 1,333,418
*平均額、 580大学調査 (文科省 :2018年12月)


納付した入学金は返還されない

 初年度納付金の納入方法には「2段階方式」と「一括方式」の2つがあります。
 2段階方式は、1次手続き時に入学金を、2次手続き時に残金を納入する方式で、私立大の多くが採用しています。一般入試の場合、1次手続きは合格発表日から1~2週間以内、2次手続きは3月に設定されているケースが多く、併願している他の大学・学部の結果が出てから入学を決めることができます。
 また、一括方式は、指定された期日までに入学金や授業料等を一括して納入する方式。納入後、指定日までに入学辞退の手続きをすれば授業料等を返還する方式を併用している大学もあります。
 ただし、2段階方式、一括方式ともに入学金は返還されません。特に、早い時期に合格発表があるAO入試や推薦入試、一部のセンター利用入試などは納入期限も早くなるため、合格発表、入学手続きのスケジュールをよく確認しておきましょう。

自宅外生は新生活の準備費用も

 大学への納付金以外にも、入学時にはさまざまな出費が重なります。入学式に出席するためのスーツ代や教科書・教材費、パソコン購入費、入学祝いのお返しなどなど…。自宅外(下宿)通学者はこれらに加え、住まい探しのための交通費・滞在費や住居費、引っ越し代、新生活のための家財道具の購入費なども必要になります。
 アパート・マンションの賃貸契約時に払う住居費(敷金・礼金・手数料・前払い家賃等)は、家賃のおよそ4~6カ月分が相場。東京都内で暮らす下宿生の1カ月の部屋代を6万円とすると、それだけで24~36万円かかる計算になります。
 日本政策金融公庫が昨年実施した全国調査によると自宅外通学を始めるための平均費用(住居費や家財道具の購入費など)は、37万4000円。東京私大教連の調査では約59万8000円となっています。都内で下宿を考えている人は最低でも50万円以上かかると見ておいたほうが無難でしょう。
 これらのお金は、先に紹介した入学費用(日本政策金融公庫の平成30年度「教育費負担の実態調査結果」)には含まれていません。自宅外通学者は、こうした自宅外通学の準備に向けた費用も入学前に用意しておく必要があります。

■自宅外通学を始めるための費用

自宅外通学を始めるための費用