前期日程では国立より公立が人気
18年度入試の総括といっても、各私立大の状況が公表されていないので、今号では国公立大を中心に紹介する。なお、センター試験の結果は、前号で紹介したため、ここでは、個別試験(2次)の状況を中心に分析したい。
文科省によれば、18年度の国公立大一般入試の確定志願者数は、46万5708人(右表)で、17年度に比べて1.1%減少。また、定員(10万547人)に対する志願倍率は17年度4.7倍→18年度4.6倍とダウンした。
センター試験の平均点のダウンなどによって、安全志向が鮮明になり、志願者を減らした国公立大が目立った。また、国立大・公立大を日程別に見てみると、前期は国立大0.9%減、公立大1.3%増、後期は国立大2.9%減、公立大4.3%減と、前期は国立大から公立大へ流れた。
社会福祉・国際・薬・家政・生活が増
学部系統別の志願状況を見てみよう。
文系では社会福祉、国際・国際関係、理系では薬、家政・生活科学が対前年でプラスとなった。他の系統は文系・理系ともに減少した。国立の「文系縮小」もあり、全体に「文低理低」となった。しかし、私立の難関大・大規模大の動向を見ると、大学卒業者の就職の好調さもあり、国公私立大の全体としては、18年度も「文高理低」傾向が続いているようだ。
日程 | 大学・学部 | 志願者 | 倍率 |
---|---|---|---|
国立前期 | 東京藝術大・美術 | 2934 | 12.5 |
国立後期 | 金沢大・地域創造学類 | 324 | 32.4 |
公立前期 | 山口東京理科大・工 | 1184 | 12.3 |
公立後期 | 新見公立大・健康科学 | 254 | 31.8 |
公立鳥取環境大・経営 | 318 | 31.8 | |
公立中期 | 山口東京理科大・工 | 1001 | 38.5 |
(文科省:2018.2.15)
注目したいのは、公立大の人気である。下表を見れば分かる通り、人文・社会、理工、薬・看護において公立大のほうが国立大よりも志願倍率が上回っている。
公立大は、一部私立大の公立化によって増加している面がある。左下表で分かる通り、公立化2年目の山陽小野田市立山口東京理科大は、薬学部が新設されたとは言え、想像を超えた増加ぶりだった。
学部系統 | 区分 | 18年度 | 前年比(%) | ||
募集人員 | 志願者 | 倍率 | |||
人文・社会 | 国立 | 18,960 | 79,719 | 4.2 | 97.3 |
公立 | 8,406 | 54,816 | 6.5 | 106.3 | |
計 | 27,366 | 134,535 | 4.9 | 100.8 | |
理工 | 国立 | 32,243 | 129,424 | 4 | 99.6 |
公立 | 3,690 | 28,126 | 7.6 | 104.2 | |
計 | 35,933 | 157,550 | 4.4 | 100.4 | |
農・水産 | 国立 | 5,512 | 21,167 | 3.8 | 96.7 |
公立 | 931 | 5,303 | 5.7 | 95.8 | |
計 | 6,443 | 26,470 | 4.1 | 96.5 | |
医・歯 | 国立 | 7,302 | 36,740 | 5 | 97.2 |
公立 | 969 | 4,944 | 5.1 | 84.8 | |
計 | 8,271 | 41,684 | 5 | 95.5 | |
薬・看護 | 国立 | 1,070 | 5,023 | 4.7 | 92.7 |
公立 | 3,610 | 20,713 | 5.7 | 102.8 | |
計 | 4,680 | 25,736 | 5.5 | 100.7 | |
教員養成 | 国立 | 9,905 | 38,324 | 3.9 | 95.8 |
その他 | 国立 | 4,006 | 19,808 | 4.9 | 103.8 |
公立 | 3,943 | 21,601 | 5.5 | 87.8 | |
計 | 7,949 | 41,409 | 5.2 | 94.8 | |
合計 | 国立 | 78,998 | 330,205 | 4.2 | 98.2 |
公立 | 21,549 | 135,503 | 6.3 | 100.6 | |
計 | 100,547 | 465,708 | 4.6 | 98.9 |
*募集人員・志願者:人数。 (文科省:2018.2.15)
志願者数最多は千葉大で3年連続
志願者数の多い国公立大はどこだったのか?1位は千葉大(1万756人)、2位は神戸大(9980人)、3位は北海道大(9849人)、4位は東京大(9675人)、5位は富山大(8478人)だった。千葉大は3年連続1位だが、前年比8%減。工・薬・園芸の後期縮小に加え、前年の反動が強く出た。 難関大の東京大は4位であり、文Ⅱは7%増だったが、面接を追加した理Ⅲは15%減だった。京都大は8233人で前年比2%減。前期は並みだったが、法の後期が大幅減した。東京医科歯科大(8%減)、一橋大(8%減)、九州大(3%減)など。
東北大は9%増。世界最高水準の研究を行う「指定国立大学」に選ばれた効果に加え、経済・理の後期が難関国立大の併願先として人気を得た。 受験生の安全志向は準難関校でみられた。筑波大(13%減)、東京外国語大(12%減)、熊本大(12%減)など。このほか、各地区の国公立大中堅校も、「文系・教員養成系」縮小を行った大学だけでなく、全体に志願者減の大学が多かった。
ところで、18年度入試の2段階選抜の状況はどうだったのか?前期日程の2段階選抜を予告した学部(59大学152学部等)に対し、実際に行ったのは21大学40学部等と学部数は前年と変わらなかった。第1段階選抜の不合格者数は、3070人だった。
私立大志願者数1位は近畿大、5年連続
近畿大は、18年度一般入試の志願者数が15万6225人となり、5年連続で全国1位になった。対前年で9329人増加した。2位は法政大、3位は明治大、4位は早稲田大、5位は東洋大だった(下表参照)。
18年度入試では、英語外部試験を利用する大学が増加した。現在のセンター試験の英語では、4技能(「読む」「聞く」「書く」「話す」)のうち、「読む」「聞く」の2技能のみ。2020年度に、センター試験に代わって導入される「共通テスト」では4技能を測定する英語外部試験を利用する。
その先取りのように、国際やグローバル関連の部を中心に英語4技能を測る外部試験の利用が増えているのだ。
首都圏の大規模大学などでは、文科省の「定員管理の厳格化」に神経を使っているという。決められた定員の枠をオーバーしてしまうと、補助金に影響するのだ。
そんなこともあり、該当する大学は、難化している。また、少子化によって大学経営が厳しくなるという「2018年問題」を迎えている。
大学名 | 志願者数 | 前年度 | 増減 |
---|---|---|---|
東北学院大 | 10,181 | 10,541 | ▲360 |
千葉工業大 | 78,905 | 74,466 | 4,439 |
青山学院大 | 62,905 | 60,966 | 1,939 |
慶應義塾大 | 43,301 | 44,845 | ▲1,544 |
駒澤大 | 44,815 | 41,666 | 3,149 |
芝浦工業大 | 41,734 | 38,598 | 3,136 |
上智大 | 31,181 | 29,277 | 1,904 |
専修大 | 45,761 | 44,462 | 1,299 |
中央大 | 88,182 | 74,029 | 14,153 |
東海大 | 52,022 | 49,107 | 2,915 |
東京理科大 | 56,566 | 53,515 | 3,051 |
東洋大 | 115,441 | 101,180 | 14,261 |
日本大 | 115,180 | 112,583 | 2,597 |
日本女子大 | 10,951 | 11,713 | ▲762 |
法政大 | 122,499 | 119,206 | 3,293 |
明治大 | 120,279 | 113,507 | 6,772 |
明治学院大 | 29,714 | 25,319 | 4,395 |
立教大 | 71,793 | 62,655 | 9,138 |
早稲田大 | 117,209 | 114,983 | 2,226 |
南山大 | 25,337 | 26,090 | ▲753 |
京都産業大 | 50,562 | 43,155 | 7,407 |
同志社大 | 58,596 | 56,152 | 2,444 |
立命館大 | 98,262 | 96,126 | 2,136 |
龍谷大 | 51,802 | 48,963 | 2,839 |
関西大 | 92,237 | 84,586 | 7,651 |
近畿大 | 156,225 | 146,896 | 9,329 |
関西学院大 | 42,304 | 43,029 | ▲725 |
西南学院大 | 21,473 | 21,571 | ▲98 |
福岡大 | 48,982 | 49,053 | ▲71 |
*単位:人、増減:対前年、▲:減 (2018.4.10)
(データ:各大学HP+西北出版「2018年度 出願速報」より)