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【学費】「在学中の教育費」は私立理系185.3万、文系160.1万円!!進学前の準備が捻出の大きな柱。

一部の国立大が授業料を大幅値上げ

 前節の「受験に関わる費用」で初年度納付金について触れましたが、基本的には、そこから入学金分を引いた額が2年目以降の学費(年間)になります。
 2018年度の国立大学の授業料の標準額は53万5800円。2004年の大学法人化以降、国立大学は文部科学省が定める標準額の20%(2006年度までは10%)を上限に、各大学の判断で授業料を決められるようになりました。しかし、実際にはどこも横並びで、2018年度も大学院を除く全国立大学が上記の標準額を授業料としています。
 ところが今年度、独自の判断で学費の値上げに踏み切る大学が現れました。東京工業大学と東京藝術大学が、2019年度以降の入学生の授業料をそれぞれ63万5400円と64万2960円に改定。どちらも10万円前後とかなり大幅な値上げです。「より高度な教育研究環境を実現するため」というのが授業料改定の名目ですが、今後、こうした値上げの動きが各国立大学の間で広がっていく可能性は十分に考えられます。
 また、公立大学の授業料は、基本的に国立大学の標準額に準じていますが、大学によって多少金額に差があります。大学が設置されている地域(都道府県や市など)の在住者、あるいは地域内の高校出身者に対して入学金の割引を行っているところが多いのも特色の一つです。例えば、首都大学東京の場合、入学金は通常28万2000円ですが、都内在住者(1年以上)は半額の14万1000円とかなりお得になります。

私立大の学費は国立大の2倍以上

 一方、私立大学の学費は、国立大学などに比べて大学・学部ごとにかなり開きがあります。下の図表を見ても分かるように、文系学部よりも理系学部や芸術系学部のほうが高額。特に医・歯系は、初年度分だけで文系学部の4年分の学費を上回るほどです。しかも、医・歯・薬(薬剤師養成課程)と獣医学部は6年制なので、他の学部より2年分多く学費を払い続けなければなりません。先を見据えてマネープランを考える必要があります。

■私立大学の学部系統別初年度納付金(2017年度)
系統・学部 授業料 入学金 施設設備費 合計
文科系 文・教育 790,025 233,136 162,950 1,186,112
神・仏教 729,327 214,288 159,613 1,103,228
社会福祉 747,726 214,439 183,025 1,145,190
法・商・経 777,446 232,284 142,784 1,152,515
平均 781,003 231,811 152,496 1,165,310
理科系 理・工 1,068,849 242,670 162,827 1,474,346
1,435,167 341,541 305,834 2,082,542
農・獣医 965,891 246,282 200,987 1,413,162
平均 1,101,854 254,941 184,102 1,540,896
医歯系 2,667,583 1,325,507 1,050,137 5,043,227
3,167,038 563,403 558,798 4,289,239
平均 2,847,940 1,050,306 872,711 4,770,957
その他 家政 806,677 255,704 190,722 1,253,103
芸術 1,108,953 259,312 267,937 1,636,203
体育 814,856 258,265 221,032 1,294,152
保健 995,575 272,467 2,232,766  1,500,808
平均 957,495 264,503 232,766 1,452,102
全平均 900,093 252,030 181,294 1,333,418
※(文部科学省「平成29年度私立大学入学者に係る初年度学生納付金平均額(定員1人当たり)」を基に作成)
※医学部看護学科は「保健」区分に含む


学費以外の教育費や生活費も忘れずに

 大学で学ぶ際には、学費以外にもいろいろお金がかかります。教科書・教材費や実習費、通学のための定期代などです。また、自学自習のための出費(参考書・問題集など)や、人によっては大学以外にも教育費(通信教育や語学教室など)が必要になることもあります。こうした広い意味での「教育費」は、年間どのくらい必要になるのかを見てみましょう。
 前出の日本政策金融公庫の調査によると、国公立大学の1年間の教育費(在学費用)は114万8000円。また、私立大学は文系160万1000円、理系185万3000円で、国公立大学よりも約1.4~1.6倍も多くかかっていることが分かります。
 また、海外での研修が必須になっている場合や、留学、資格学校とのダブルスクールの可能性もあります。数十万円から百万円以上もの費用がかかることもあるので、入学後の費用も事前に調べておきたいところです。

■国公立・私立別にみた在学費用(子供1人当たりの費用)

国公立・私立別にみた在学費用
日本政策金融公庫「教育費負担の実態調査結果」(2019年3月20日)

 さらに自宅外通学者(下宿生)は、一人暮らしのための生活費も余計に必要になります。日本学生支援機構(JASSO)の「平成28年度学生生活調査報告」によれば、東京圏に住む私立大生の生活費は自宅生が年間44万200円(全国平均41万6600円)なのに対し、下宿生は121万2800円(同108万9300円)。実に3倍近い開きです。この差は主に住居・光熱費と食費によって生じています。
 このような高額の教育費・生活費を親の収入だけでやりくりするのは容易ではありません。では、どのような方法でこれらの費用を捻出しているのでしょうか。それを示したのが、日本政策金融公庫の調査をまとめた右のグラフです。
 1位は「教育費以外の支出を削っている(節約)」で31.7%。以下、「預貯金や保険などを取り崩している」(23.3%)、「奨学金を受けている」(21.0%)、「子供がアルバイトをしている」(20.3%)と続きます。ちなみに1位の回答の内訳(節約している支出)は、「旅行・レジャー費」「外食費」「衣類の購入費」がトップ3を占めています。
 この調査結果を見ると、親が節約や貯金の取り崩しなどで費用をまかなうだけでなく、大学に通う子供自身も、家計の負担を減らすためにアルバイトをしたり奨学金などを利用したりしているケースが多いことが分かります。アルバイトは収入を得るための手段であると同時に、社会を知るよい機会でもあります。学生の本分は学業であることは確かですが、さまざまな社会経験を通して視野を広げることも大学時代には必要。アルバイト先は、大学の学生課などで紹介してもらえばより安心です。

■教育費の捻出方法(三つまでの複数回答)

教育費の捻出方法

日本政策金融公庫「教育費負担の実態調査結果」(2019年3月20日)