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【奨学金】奨学金は「給付型」と「貸与型」の2種。日本学生支援機構はじめ、大学や自治体にも独自の制度が。

大学生の半数が奨学金制度を利用

 学費や下宿代など、大学進学に伴う経済的負担を軽減してくれる強い味方が奨学金。日本学生支援機構(JASSO)の「平成28年度学生生活調査」によれば、大学の昼間部に通う学生のほぼ半数が何らかの奨学金を受給しています。
 奨学金には返還する必要のない「給付型」と、卒業後に返還義務が生じる「貸与型」の2種類があり、貸与型は無利子のものと利子があるものに分かれます。給付型は申込条件や審査基準が厳しいものが多く、逆に貸与型・利子付きは比較的緩やかなのが特色です。
 奨学金制度の中で最も一般的なのは日本学生支援機構の奨学金制度。貸与型(無利子、有利子)が中心ですが給付型もあり、奨学金を受給している学生の9割近くが利用しています。このほかにも各大学や自治体、企業・団体などが独自の奨学金制度を設けています。日本学生支援機構の奨学金については20ページで詳しく解説しますので、ここではそれ以外の奨学金制度について見ていきましょう。
 なお、奨学金は大学入学後に振り込まれるため、入学手続き時の納付金には利用できません。入学前にまとまったお金が必要な場合は、国や金融機関などの「教育ローン」の利用をお勧めします。

受験前に採否が分かる「予約採用型」

 各大学には特色のある独自の奨学金制度が設けられています。給付型が多く、貸与型の場合でも無利子のものもあるので、志望大学で出願条件を満たしているものがあれば積極的に応募してみるといいでしょう。申し込み時期は大学入学後が一般的ですが、近年は入学前に申請を行う「予約採用型」の奨学金制度を導入する大学が、東京・大阪など都市部を中心に全国的に増えてきています。この予約採用型の奨学金は、受験前の段階で選考結果(採否)を知ることができるため、早い段階で入学後のマネープランを立てやすいのがメリット。
 ただし、遠隔地から優秀な人材を集めることを目的としたものも多く、大学の通学圏内の居住者は応募できない場合があるので注意が必要です。
 例えば、早稲田大学が設けている予約採用型の奨学金制度「めざせ!都の西北奨学金」は、首都圏(東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県)以外の高校等の出身者が対象。採用者には半期(春学期)分の授業料相当額が4年間給付されます(毎年進級時に継続支給の判定を実施)。採用候補者は1学年あたり約1200人とかなり多く、入学試験合格後、所定の期日までに手続きを行うことで正式に奨学生として採用されます。
 下の図表は私立大学が設置している予約採用型奨学金の一部です。このほか、東京大学(さつき会奨学金)や電気通信大学(UEC修学支援奨学金)、お茶の水女子大学(みがかずば奨学金)など国立大学にも同タイプの奨学金制度があります。

■「大学独自の奨学金(予約採用型)の例
大学名 奨学金名 概  要
早稲田大学 めざせ!都の西北奨学金 首都圏(東京・神奈川・千葉・埼玉)以外の高校等出身者が対象。半期分の授業料を4年間給付。
小野梓記念奨学金(新入生予約採用型) 首都圏(東京・神奈川・千葉・埼玉)の高校等出身者のみが対象。年額40万円を4年間給付。
慶應義塾大学 学問のすゝめ奨学金 首都圏(東京・神奈川・千葉・埼玉)以外の高校等出身者が対象。入学金相当額と年額60万円(学部により異なる)給付。
上智大学 上智大学新入生奨学金 上智大学を第一志望とする者が対象。初年度授業料の全額~3分の1相当額を減免。
立教大学 自由の学府奨学金 首都圏(東京・神奈川・千葉・埼玉)以外の高校等出身者が対象。文系学部50万円、理学部70万円を原則4年間給付。
セントポール奨学金 首都圏(東京・神奈川・千葉・埼玉)の高校等出身者のみが対象。文系学部40万円、理学部60万円を原則4年間給付。
青山学院大学 地の塩、世の光奨学金 首都圏(東京・神奈川・千葉・埼玉)以外の出身者が対象。年額50万円を原則4年間給付。
中央大学 中央大学予約奨学金 首都圏(東京・神奈川・千葉・埼玉)以外の高校等出身者が対象。授業料の半額を原則4年間給付。
大東文化大学 桐門の翼奨学金 成績優秀でありながら経済的理由で進学が困難な者が対象。1年次は授業料全額免除、2年次以降は半額減免。
神奈川大学 米田吉盛教育奨学金(予約型奨学金) 神奈川・東京以外の高校出身者または在住者が対象。文系学部40万円、理工系学部50万円を原則4年間給付。
立命館大学 近畿圏外からの入学者を支援する奨学金 近畿圏外の在住者対象。年額30万円を4年間(薬学部薬学科は6年間)給付。
関西大学 学の実化 関西大学に強く入学を希望する受験予定者が対象。年額30~55万円(学部や出身高校の所在地により変動)を4年間給付。
>>奨学金制度については、こちら(「2019 年度 大学 奨学金情報」もご参照ください。


被災支援や申請不要の奨学金も

 受験生を対象に行われるもう一つの奨学金制度が「スカラシップ入試」です。給費生入試、特待生入試など、大学によって呼び方はさまざま。予約採用型の奨学金制度と同じく、入学前に採否の結果が分かるのが特色です。
 センター試験利用入試や一般入試の成績上位者を給費生として選ぶ方式が主流ですが、AO入試や推薦入試として行われる場合もあります。出願の際にスカラシップ入試の申請をする必要がある場合と、特に申請しなくても自動的に選ばれる場合の2つのパターンがあります。募集枠が少ないので試験に合格するのは容易ではありませんが、そのぶん非常に手厚い内容になっているものも多くあります。
 奨学金の多くは「学業成績が優秀な学生」や「経済的理由などにより修学困難な学生」を対象にしています。しかし、大学によってはそれ以外にも、スポーツや文化活動などに積極的に取り組んでいる人材や、海外留学を目指す学生、TOEICや日商簿記などの資格取得者、兄弟姉妹が同時に在籍している学生、卒業生・在学生・学校関係者の紹介による入学者、災害等で家族が被災した学生など、さまざまなケースに応じた支援制度が用意されています。

地域の活性化めざし若者を支援

 都道府県や市区町村など地方自治体の奨学金制度は、地域の在住者とその子弟を対象にしたものが大部分です。申込条件や募集人数、支給額は自治体により異なりますが、貸与型(無利子・有利子)が中心で、他の奨学金と併用できないものや、家庭の経済状況、地方税や社会保険の滞納の有無など、条件が細かく規定されているものも少なくありません。
 また、最近は、若者の地元定住や地域創生に向けた取り組みの一環として、奨学金の返還の一部を肩代わりする自治体も増えてきました。例えば、鳥取県では、県内の特定の業種(製造業、情報通信業、薬剤師の職域、建設業・建設コンサルタント業、保育士・幼稚園教諭の職域、農業など)への就業と県内定住を希望する学生等に対して、日本学生支援機構などの奨学金の返還を助成する制度(利子を除く返還額の50~25%、上限あり)を導入。このほか新潟県や栃木県、喜多方市(福島)、熊谷市(埼玉)、神戸市(兵庫)といった多くの自治体でも同様の目的で奨学金返還の助成を行っています。
 地域外に進学した学生の通学定期券代を補助する取り組みもあります。静岡市では、県外の大学等に通学する学生の新幹線定期代の3分の1を貸与する制度(1か月上限3万円、卒業後も市内に居住する場合は返還を免除)を、また上越市(新潟)や山梨市、栃木市など複数の自治体でも、若者の流出を防ぐために市外の大学等に通う学生の定期代を貸与する制度を導入しています。

民間団体・企業にも多彩な制度が

 民間団体や企業にも、特色ある奨学金制度が数多く用意されています。民間団体では、病気や災害、事故などで両親を失った遺児らを対象にした「あしなが育英会」の貸与型奨学金が代表的。そのほか、へき地の勤務医養成を目的とした地域医療振興協会の医学生奨学金(貸与)や、交通遺児育英会の貸与奨学金などがあります。
 一方、企業関連の奨学金は、指定校制や対象地域を限定したもの、特定の分野・学部の学生を対象にしたものなど種類が豊富。また、新聞配達員になることで奨学金や住居の無料提供が受けられる各新聞社の新聞奨学生制度もあります。
 以下に掲げたのは企業関連の奨学金の一部。返還不要の給付型も多いので、自分に合った奨学金が見つかったら積極的に応募してみましょう。

■企業等が運営する奨学金制度の例
奨学金名 概  要
JT国内大学奨学金 指定する国公立大学の入学生が対象。学校納付金相当額と入学時一時金(自宅外生のみ)ほか、月額奨学金(5~12万円)を卒業年次まで給付。
電通育英会大学給付奨学制 度指定する大学の入学者が対象(指定校制)。入学一時金等40万円と月額7万円を給付。また、奨学金とは別に大学在学中の海外留学・海外ボランティアなどの活動に対する支援制度も併設。
トヨタ女性技術者育成基金奨学プログラム 同基金・系列企業の育成プログラムに参加可能な工学系専攻の女子学生が対象。指定金融機関から借り入れた就学費用の利息を給付。さらに一定の条件を満たした場合には元金の全額または半額を給付。
三菱UFJ信託奨学財団奨学生 指定する大学・学部の2年次生以上で在学する学校長が推薦する者が対象。月額3万5000円を卒業時まで給付。
コカ・コーラ教育・環境財団奨学生 大学進学をめざす高校生が対象。大学合格後、卒業年次まで月額1万5000円を給付。
小田急財団安藤記念奨学金 指定する大学の1年次生が対象。卒業まで(正規の最短修業年限内)月額2万円を給付。